(公財)国際宗教研究所
 
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『ラーク便り』データベースについて

『ラーク便りの全記事のうち、ここでは「宗教専門紙の記事」、「一般紙・雑誌の国内宗教関連記事」、「国外の宗教ニュース」をデータベース化してあります。
ただし、最近3年間のものは収録されておりません。
『ラーク便り』本誌には、これ以外に「ピックアップ・ファイブ」、「研究ノート」、「エッセイ」、「宗教専門紙が書評した本」、その他が掲載されています。

媒体:専門紙/国内記事/国外記事/小特集(国内・国外)の別
小分類:国名等

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詳細
発行年 2003
号数 19
媒体 小特集(国内・国外)
大分類
小分類(国名等)
記事タイトル パナウェーブ騒動
本文テキスト  騒動の発端は、昨年の8月に多摩川に現れた一頭のアゴヒゲアザラシであった。やがて「タマちゃん」の愛称で知られるようになったこの人気者は、関東の河川を移動しながら話題を集めていた。そして今年の3月11目、「タマちゃんのことを想う会」を名乗る集団が、本来の生息地に移送する目的でアザラシの捕獲を試みた。計画は失敗し、「想う会」の行動は身近にアザラシを見ることを喜んでいた地域住民の反発を買ったが、その後も捕獲計画を続行させたことで、マスコミの注目をひくようになった。当初は単なる奇矯な団体という扱いだったが、「「タマちゃんのことを想う会」の正体はカルト宗教団体!」と題したひとつの週刊誌報道によって事態は一変する。

 騒動の発端となった記事は、「想う会」会長が、かつて「千乃正法」(ちのしょうほう)という宗教集団に所属しており、アザラシの捕獲も「先生」と呼ばれる集団のリーダー、千乃裕子氏の支持を受けたものであるという内容であった(週刊文春4/23)。
 「千乃正法」こと「パナウェーブ研究所」が、ラーク所蔵のデータベースに初めて姿をあらわすのは1995年である。福井にあった研究所の施設が、その白ずくめの様相からオウム真理教であると疑われ、放火されるなどの嫌がらせを受けたというのがその内容であった(福井新聞1995/4/22)。当時から、参加者の白装束や、千乃氏の健康を脅かしているとされる「スカラー波」遮断する効果があるという、コイル模様の描かれたプレートを全面に貼り付けた白いワゴン車で移動する姿が人目を引いていた。またこの頃すでに、場所を移しながら白い布や板を張り巡らして道路を占拠することを繰り返しており、97年9月に居留していた岡山県では往来妨害の現行犯で逮捕者が出ている(日刊スポーツ・東京1997/10/10)。その後ひっそりと活動してきた集団が、突如として衆目を集めたのである。
 彼らは、一般に「白装束集団」といわれるその特異な外見と、まったく姿を見せない「教祖」の謎によってマスコミの格好の話題となった。ワイドショーは連日彼らについて特集を組み、カメラが常に集団を取り囲んで一挙手一投足を記録した。スポーツ新聞では一般紙よりもはるかに熱意を持って集団をクローズアップし、「謎の白装束集団に出ていけ!!」(日刊スポーツ・東京4/29)、「白装束集団“乱闘”」(デイリースポーツ4/30)「いい加減にシロ!!」(内外タイムス・東京5/1)といった派手な見出しが紙面に躍った。過熱する報道攻勢は、集団に対する地域住民のさらなる反感を煽る結果となった。2002年10月頃から福井県和泉村と岐阜県大和町、八幡町の間で道路を占拠していた集団に対し、大和町および八幡町は退去を要請した(朝日・東京4/29)。地元の怒りと不安が高まるいっぽうで、報道陣とメンバーとの間での衝突が重なり、岐阜県警の八幡署員が警戒にあたった。さらに、団体が「5月15日に大災害が起きる」と主張していることが明らかになると、周囲はより不審感を強めた。やがて、報道に後押しされる形で警察が行動を開始、警察庁長官が記者会見の席上で同団体を指して、現段階での危険性は無いとしながらも「彼らの装束、行動は異様であり、住民の不安感は大きい。オウム真理教の初期に似ている」と評した。この発言とそれに続く集団の移動によって騒動はピークを迎える(産経・東京5/2)。
 岐阜県警による300人体制での捜索を受けた後、白装束集団は岐阜、山梨、長野、福井の4県の間を警察や報道陣によって幾重にも取り巻かれながら行きつ戻りつした。次なる移転先となる可能性があった各地では、住民による対策会議、移転を拒むための条例制定の検討、県や市の職員や住民による集団受け入れ拒否の意思表明などがみられた(岐阜新聞5/10他)。彼らの「放浪」はいつまでも続くかに思えたが、約2週間の彷徨の末、団体が拠点施設を置いていた福井市が、いくつかの条件と引き換えに受け入れを了承することで、移転騒ぎはいちおうの決着をみた(福井新聞5/11)。その後も、警視庁公安部と山梨、福井、岡山、福岡各県警は電磁的公正証書原本不実記録などの容疑で、福井市の本部ほか5都県による関係施設12ヶ所の一斉捜索(毎日・東京5/14)、車両不正登録の容疑での捜索(日経・東京5/14)など、団体に関する情報収集は続けられた。新聞報道によれば、ちょうどこの原稿を書いている6月、警視庁公安部の捜査が終結し、「共産主義への被害者意識は強いが、他に危害を加える危険性はみられず、強引な会費集めの形跡もない」との結論が公表された(朝日・東京6/26)。
 急激に高まり、急激に収束した「白装束集団」をめぐる一連の騒動は、オウム事件が日本社会に残した爪痕であり、いわゆる「新興宗教」への恐怖心と敵愾心を如実に示している。集団が通る可能性のある道にバリケードを張り、車の一時停止にさえ神経をとがらせる光景は、地域住民の反感と恐怖、とりわけオウムに関する記憶が生々しい長野、山梨のそれを如実に示したものである。また恐怖という火に油を注いだマスコミ、とりわけワイドショーとスポーツ新聞の役割は記憶にとどめられるべきであろう。
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